Cherreads

Chapter 30 - 第14話 - 「不可能な選択」

[1日目 - 12月5日 - 午前3時47分]

輝(カガヤク)は眠っていなかった.眠れるはずもなかった.目を閉じるたび,真(マコト)が見せた写真の中の田中カルコの顔が浮かぶ.穏やかな瞳,刻まれた皺,金を必要とし,代わりに死を与えられた男.

(俺は無実の人間を殺した.正当防衛じゃない.正当化なんてできない.ただの殺人だ.何の落ち度もない人間を狙った,冷酷な計画殺人だ)

机の上のスマホには,真から送られた設計図が表示されている.移送ルート,倉庫の概略図.そして,何年もかけて細部まで練り上げられたことがわかる拷問の図解.

輝の胃をえぐるような詳細がそこにはあった.タイムライン.1日から5日目まで,被害者の意識を保ちつつ苦痛を最大化するために計算し尽くされた拷問方法.肉体的苦痛の合間に挟まれる精神的苦痛――父・猛(タケシ)に「脱出できた」と思い込ませてから真実を突きつけ,決して来ない慈悲を乞わせ,自分が息子の中に何を作り上げたのかを骨の髄まで理解させる....

それは包括的で,秩序立っていた.苦痛を「芸術」へと昇華させた者の仕事だ.

(俺が自分の痛みを『俳優』になることで昇華したように.衝撃(ショウゲキ)が自分の痛みを『戦う力』に変えたように.トラウマへの対処法は人それぞれだ....真の場合は,それが計画的な拷問だったというだけのことだ)

スマホが震えた.衝撃からのメッセージだ.『私も眠れない.そっちに行っていい?』 『来いよ』

20分後,彼女は部屋の窓から入ってきた.里親に午前4時の密会を知られるわけにはいかない.赤いマフラーを固く巻き,深紅の瞳は疲労と恐怖で濁っていた.

「田中カルコを調べたわ」彼女は前置きなしにスマホを取り出した.「ホームレスになる前の,古いSNSのアカウントを見つけたの....彼には娘がいた.8年前に自殺してる....その時の医療費の支払いで,彼は破産したのよ.金が底をつくと,妻は彼を捨てた.彼は,亡くなった娘の汚名をそそごうとして借金を背負い,ホームレスになったの....世間は娘の自殺を母親(妻)のせいにしたけど,彼は娘が学校でいじめられていた真実を伝えようと必死だった....でも妻は,最初から彼の金が目当てだった.金がなくなれば,絶望する彼を置いて平気で去っていったわ....それから彼は社会から忘れ去られ,数年後,私たちが現れて...彼を殺した....これが,彼の物語よ」

彼女は輝に写真を見せた.若かりし頃の田中と,妻,そして子供.公園でみんな笑っている.幸せで,ありふれた,悲劇にすべてを壊される前の姿.

「...娘の遺志を守ろうとして壊れた人を,私たちは殺したのよ」衝撃の声が震えた.「喪失を知っている人を殺したの.もし,私たちが彼と話をしていれば...殺す代わりに話をしていれば,きっと私たちのことを分かってくれたはずなのに...」

「...やめろ」輝はそれ以上聞けなかった.罪悪感を処理しきれない.「起きたことは変えられない.俺たちにできるのは,次に何をするか決めることだけだ」

「...次って何? 真の父親を拷問死させるのを手伝うこと? 今までしてきたことより,もっとひどいことの共犯になるの?」

「...さもなければ,田中さん殺害の罪で刑務所行きだ.終身刑.すべてが壊れる.夢も,希望も,贖罪のチャンスも...全部消えるんだ」

二人は沈黙した.不可能な選択が,重くのしかかる.

「...第3の選択肢があるはずよ」ついに衝撃が言った.「私たちが見落としている何かが.どうにかして――」

「どうにかして,何をする? 真を出し抜くのか? あいつは何年もこれを計画してきたんだ.すべてを計算し尽くしている」輝は再び設計図を広げた.「あいつには切り札も,リソースも,証拠もある.どの道を選んでも地獄に落ちるように,俺たちを追い詰めたんだ」

「...なら,清水さんに電話しましょう.すべてを話して,助けてもらうのよ」

「何て言うんだ? 『無実の人を殺しました,今は拷問の手伝いをしろと脅されています』ってか? 彼女なら警察に行けと言うだろう.すべてを自白して,報いを受けろってな」

「...それが正しい選択なのかもしれないわ」

「そうか?」輝の黒い星がまたたいた.「すべてを仕組んだ奴に操られた結果,俺たちが残りの人生を刑務所で過ごす.猛は拷問から逃れ,真は裁きを逃れ,俺たちだけが罰を受ける...それが『正しい』のか?」

「...じゃあ,拷問を手伝って,世間が思う通りの『怪物』になるのが正解だと言うの?」 答えのない問い.あるのは,地獄の深さの違いだけだ.

「...考えさせてくれ」輝は言った.「真が本当に望んでいることを理解する必要がある.これは単なる復讐じゃない.もっと別の,深い何かがあるはずだ」

「...標的を拷問死させることより深いものなんて,あるの?」

「...『繋がり』だ.あいつ自身が言っていた.家族が欲しいと.自分を見て,理解してほしいんだ.拷問は,その中に入るための『入場料』に過ぎない」輝は立ち上がり,歩き回った.「...もし,あいつが本当に欲しがっているものを与えたらどうなる? 拷問の手伝いじゃなく,理解を.承認を.あいつが切望している通りに,あいつを見てやるんだ」

「...私たちを人殺しにしようと脅している相手を,セラピーしようって言うの?」 「...これ以上の死を出さないための道を見つけたいんだ」 口に出した瞬間,それがどれほど甘く,不可能なことか輝自身も分かっていた.

スマホが震えた.真の使い捨て番号からのメッセージだ. 『チクタク,従兄さん.移送まで48時間....どちらの自分になりたいか決めたかい? 刑務所に入る「殺人犯」か,自由の身になる「共犯者」か....第3の選択肢なんてない.最初からなかったんだよ』

輝はスマホを部屋の隅に投げつけた.壁に当たり,画面が割れて床に転がった.

「...あいつが憎い」彼は静かに言った.「こんなことをするあいつが.俺たちを操り,田中さんを殺させたあいつが.こんな選択を強いるあいつが....でも,俺は...」声が詰まった.「...あいつのことが分かってしまうんだ.それが何より最悪だ.理解したところで,すべきことは変わらないんだから」

衝撃が彼の手を握り,強く締め直した.「何を決めるにしても,二人で決めましょう.パートナーでしょ....最後まで」 「...その決断が,俺たちを破滅させるとしてもか?」 「...もう破滅してるわ.問題は,この残骸の中から何か一つでも救い出せるかどうかよ」

[2日目 - 12月6日 - 佐藤刑事のオフィス]

佐藤刑事はデスクで,3週間自分を支配し続けてきた事件ファイルを見つめていた.「真」の遺体の現場写真,検視報告書,目撃証言,防犯カメラの映像.

何かがおかしい.最初から感じていた違和感が,確信へと変わりつつあった.

遺体が,違う.身長や体格は一致しているが,激しい損傷があるとはいえ,顔の骨格の何かが違うのだ.周囲は水死による膨張だと片付けていたが,検視官は「真の医療記録とは矛盾する微細な骨構造の差」をメモしていた.

だがDNAも歯科記録も一致した.公式なデータはすべて一致していた....あまりにも完璧すぎる,と佐藤は思った.誰かが「一致するように仕組んだ」かのように.

彼女は山下公園の映像を再生した.輝が被害者を突き落とすシーン.1コマずつ確認する.被害者の顔は一度もはっきり映っていない.常に背を向け,闇と雨に紛れている.

都合が良すぎる. 電話が鳴った.検視官からだ.「佐藤刑事? 例の星野真の件ですが,再確認して気になったことがあります」

「何?」

「DNAの一致が出るのが早すぎたんです.通常は3日から5日かかる.今回は18時間で出た.データを提供したのは昨年引退した個人歯科医ですが,事務所は閉鎖され,記録は遺産管理弁護士に引き継がれていました....その弁護士は,星野家の事務も担当している人物です」

佐藤の感覚が鋭く研ぎ澄まされた.「...識別データが捏造された可能性があると言いたいの?」

「リソースと計画性があれば,可能です.組織サンプルにあらかじめ星野真のDNAを混入させ,歯科記録をすり替える....金と時間があれば,不可能ではありません」

「...じゃあ,あの遺体は星野真じゃないかもしれない」 「遺体は間違いなく誰かです.しかし,それが本当に星野真かどうか...私にはもう確信が持てません」

佐藤は電話を切り,思考を巡らせた.もし真が生きていて,死を偽装したのだとしたら,この事件の前提はすべて覆る.

輝とその友人は誰かを殺した.だが,自分たちが思っている相手ではない.佐藤は輝のファイルを開き,真の記録と照らし合わせた.

そして見つけた.真の精神鑑定記録の奥深くに.鬱,不安,自殺念慮,強迫観念....彼は何年もかけて,何かを計画していた.そして輝と衝撃は,その計画の中に足を踏み入れたのだ.

だが,それ以上に彼女を揺さぶっていたのは,この事件に対する自分自身の反応だった.

彼女はデスクの引き出しから1枚の古い写真を取り出した.誰にも見せたことのない,28年前の家族写真.「福家」の家族.父,母,長男の大地,次男のライト,長女の由美子,次女の絵美子.

彼女はライトの顔を凝視した.当時8歳の彼は,自分の居場所がないことを悟っているような顔をしていた.出口を探す瞳.口元だけの笑み.

取調室で輝が見せた,あの表情と同じだ. (ライト....戻ってきたのね.私が疑っていた通り.私が恐れていた通り)

佐藤は3年間,転生した魂を狩り続けてきた.弟が自分を苦しめるために戻ってきたのだと信じて.そして今,彼女は彼を見つけた――あるいは彼に見つけられた――.そしてサイクルが繰り返されようとしている.

「あいつは人を殺した.私が予言した通りに.警告した通りに」

だが,期待していた満足感はなかった.そこにあるのは,二人とも逃げられないパターンに囚われているという,虚しい確信だけだった.

再び電話が鳴った.署からだ. 「佐藤刑事,状況が変わりました.刑務所の移送が繰り上げられました.星野猛の施設間移送...来週の予定が,明日になりました.保安上の懸念だそうです.所長からの直命です」

佐藤の心に冷たい確信が宿った.「...明日? 何時よ」 「午後2時です.ルートも変更され,新しい看守が割り当てられました.急遽,すべてが再編されたんです」

誰かがスケジュールを書き換えるために賄賂を贈った.リソースと計画性を持つ誰か....真だ. 「新しいルートと看守の配置図を出しなさい.全部よ」 「刑事,これは管轄外ですが...」 「いいから出しなさい.今すぐ!」

彼女は電話を切り,ジャケットを羽織り,銃を確認した. 明日だ.真が何を企んでいようと,明日起きる.そして輝もそこに何らかの形で関わっている.

(...弟であろうとなかろうと,これ以上好きにはさせないわ)

彼女は署を出た.輝の里親の住所へと向かう.この連鎖を終わらせるために.

[2日目 - 12月6日 - 輝の部屋]

輝と衝撃は,存在しない答えを探して一日を費やした.すべての変数が「破滅」へと繋がる方程式を解こうとして.

「逃げよう」衝撃が三度目となる提案をした.「今夜,ここを出るの.東京も日本も,全部.真に見つからない場所へ」

「あいつなら見つけ出す.たとえ見つからなくても,一生逃げ続けることになる.あいつからも,法からも,自分からもな」輝は設計図を凝視した.「逃亡は自由じゃない.ただの緩やかな死だ」

「じゃあ,あいつを助けるのね.言われる通りにして,田中の死が仕組まれたものだという証拠を掴んで,減刑を狙う...」衝撃の声に確信はなかった.「...自分たちを守るために,拷問の共犯者になるのね」

「...そして,それを一生背負って生きる.誰かが父親を拷問死させるのを手伝ったという記憶を.そんなことができる人間なんだという自覚をな」輝の黒い星が脈動した.「...それは,刑務所よりマシな人生か?」

「...刑務所なんて綺麗すぎるわ,単純すぎる.輝,私たちは無実の人を殺したのよ.計画して,実行して,操られた結果とはいえ一人の人間が死んだ.刑務所に行けば飯が出て,屋根があって,毎朝目が覚める.田中さんにはそれがない.何もかも奪ったのよ....正直,刑務所なんて私たちがしたことに対しては生ぬるすぎるわ」

「...じゃあ,どうしろって言うんだ? 自殺か? 命を絶って釣り合いを取るのか?」

「...いいえ,それも簡単すぎるわ」衝撃の手が震えていた.「死は逃げよ.苦しみを生きる代わりに終わらせるだけ....私たちは苦しむべきなのよ.毎日この罪悪感を背負って生きるべきなの.でも,刑務所には終わりがある.終身刑にだって仮釈放の可能性がある....そんなの,あいつが受けた苦しみに比べたら,死の方がまだ慈悲深いくらいだわ....だから,どっちも不十分なのよ.刑務所も,死も」

輝は,彼女が言葉にできないことを理解した.俺たちがしたことに対して,十分な罰など存在しない.償いようがない.あまりに軽すぎる罰と,あまりに重すぎる現実の間に閉じ込められているのだ.

「...その通りだ.何一つ噛み合わない」 二人は恐ろしい沈黙の中にいた.どの道を選んでも間違っている.最近立てた計画も,今思えばどれも稚拙で,自分たちが恥ずかしくなるほどだった.だが,そんな恥ずかしさもすぐに消え去った.

輝は立ち上がり,窓の外を見た.不可能という壁に囲まれた脳内で,何かがカチリと音を立てた....清水朱里のアパート.彼女の壁に貼られた失敗の山.そして,たった一つの「成功」.

46の失敗.1つの成功....「違う選択」をした誰か. 彼の目が大きく見開かれた.

「...俺たちの考え方は間違っているのかもしれない」彼は突然,衝撃に向き直った.「答えは,自分たちの罰を選んだり,報いから逃げることじゃないんだ」

「...どういう意味?」

「清水さんだ.彼女は19年,転生した魂を救うために費やしてきた.46回失敗して,1回成功した.もし...」彼は真の設計図を床に広げた.「もし,俺たちが彼女のようになったら? 俺たちが学んだこと,俺たちが成り果てた姿を使って,他の奴らが同じ間違いを犯すのを防ぐとしたら?」

衝撃の目が丸くなった.「...私たちが...何? 他の転生者を救うって言うの?」

「考えてみろ.14時間後に真が父親を拷問しようとしている.佐藤刑事は転生した犯罪者を狩っている....他にもどこかに,前世のトラウマで壊れ,取り返しのつかない選択をしようとしている奴らがいるはずだ....そいつらを止めるんだ.俺たちが越えてしまった一線を,あいつらが越える前に介入するんだよ」

「...それで,田中さんにしたことが消えるわけじゃないわ」

「消えない.永遠にな」輝の声に熱がこもった.「でも,俺たちの転生に『目的』が生まれる.二度目のチャンスを与えられたことを,ただの痛みと復讐の連鎖で終わらせない意味ができるんだ....俺たち自身を救うことはできない.もう手遅れだ.でも,他の奴らがここまで来るのを防ぐことはできるはずだ」

衝撃がゆっくりと立ち上がった.「...清水さんと一緒に働くっていうの? 彼女のようになると?」

「そうだ.真の脱獄を止めるんだ.佐藤刑事に匿名で証拠を送り,拷問を手伝わずに阻止する.そして真には,あいつが本当に欲しがっているもの――家族,繋がり――を,暴力じゃなく治療を通して与えられるように動く....君の両親を殺した奴らも,復讐じゃなく法的に裁く.佐藤刑事とも協力し,転生者を狩るのではなく助けるべきだと分からせるんだ」

「...そんなの...」衝撃の声が震えた.「狂ってるわ.脱獄を阻止して,ソシオパスを更生させて,自分たちを捕まえようとしている警察と協力して,人殺しを追い詰める...それを14時間以内にやるって言うの?」

「ああ.たぶん失敗する.結局,最後には刑務所行きだろうな」輝の黒い星がまたたいた.「でも,少なくとも『足掻いた』ことにはなる.自由でいられる最後の時間を,これ以上の死を防ぐために使う.この罪悪感に意味を持たせるんだ.罪を,ただの重荷じゃなく,誰かを救うためのエネルギーに変えるんだよ」

「...映像はどうするの? 真は私たちを破滅させるわよ」

「...かもしれない.でも,もしあいつに本当に必要なもの――本当の家族としての繋がり,本物の助けを与えられたら,復讐なんていらなくなるかもしれない」輝はスマホを手に取った.「あいつに取引を持ちかける....正しい方法で,俺たちが『家族』になると.面会し,手紙を書き,セラピーを受け,心を通わせる.その代わり,拷問はやめろ,映像も出すなと....あいつは父親以上の怪物にならずに,ずっと欲しかったものを手に入れられるんだ」

「...断られたら?」

「その時は報いを受ける.刑務所へ行くさ.でも,少なくとも悲劇を防ごうとしたという事実は残る」彼の声が和らいだ.「衝撃,俺たちは贖罪なんてできない.天秤が釣り合うことはない....でも,俺たちの『転生』そのものを救うことはできるかもしれない.自分たちのための二度目のチャンスを,誰かのために意味のあるものに変えるんだ.それは,今まで俺たちがしてきたことより,ずっとマシな生き方のはずだ」

衝撃は設計図を,真の拷問計画を,壊れたシステムが壊れた人間を生む証拠を見つめた.「...これで,私たちの罪が軽くなるわけじゃない」

「ああ.俺たちは人殺しのままだ.許されない.田中カルコの死を一生背負い続ける」輝は彼女の目を見た.「でも,この罪悪感に『方向』ができる.目的ができる....他の誰かが,自分たちの天秤にこれ以上の重りを載せるのを防ぐチャンスができるんだ」

彼女は長い間,黙っていた.深紅の瞳が,暗くなったり明るくなったりと明滅した.

「...わかったわ」ついに彼女は言った.「清水さんに電話しましょう.すべてを話して,真を止め,彼女と同じように転生者を救う人間になれるよう助けを求める.佐藤刑事からも逃げない....私の両親の仇も,正しい方法で見つけ出す.自由な最後の時間を,何かを正すために使いましょう....それから,私の物語にも決着をつけたい.この復讐を終わらせることも,私たちの荷物を減らすことに繋がるはずよ....自分の物語の仇について,証拠不足で何もできていなかった自分にも,これでケリをつけられるわ」

「...たぶん,うまくいかないとしてもか?」 「...うまくいかないからこそ,やる価値があるのよ.何もしないより,足掻いて失敗する方がずっと正直だわ」 彼女は彼の手を握った.「...電話して」

午前4時.呪われたはずのその時間は,別の何かに変わった.輝は清水朱里に電話をかけた.2回目のコールで彼女は出た.疲れているが,鋭い声だった. 「...いつかけてくるかと思っていたわ.降参するつもり?」

「...始めるつもりです」輝は答えた.「俺たち自身を救うことはできません.でも,あなたが他の誰かを救う手伝いならできるかもしれない....14時間後に起きようとしている拷問殺人を防ぐことから始めたいんです.あなたの助けが必要です.清水朱里,力を貸してください」

沈黙.それから清水の声が変わった.諦めが消え,焦点が定まった,確信に満ちた声に.

「...すべて話しなさい.細部まで.時間はないけど,やるべきことは山積みよ....もし,本気で悲劇を繰り返さないつもりなら,始めましょう」

夜明け前の暗闇の中,二人の殺人者は計画を練り始めた.逃亡でも,罰でも,贖罪でもない.自分たちの「目的」のための計画を. 天秤が釣り合うことは決してない.だが,誰かがその天秤に新たな重りを載せるのを止めることはできる. そして,運命はここから.誰も予想しなかった激動の結末へと舵を切る.

つづく... [次回:第15話「傀儡師の舞台(パペットマスターズ・ステージ)」]

More Chapters